
BLOGOSに掲載されている「大西宏」のマーケティングエッセンスというコラムがある。
この文章の中に「日本の液晶技術」について書いてある。まさに、日本国内しか見えていないこの人の狭い知識がわかってしまう。いま、世界の液晶パネルのシェアのほぼ半分を韓国の三星ただ1社が持っており、あとの半分のほとんどを台湾の企業群が持っている。そのあいだに、日本の液晶パネルのシェアがある、というのが現実だ。当然、技術開発もその多くが韓国や台湾が先行している、というのは業界の常識だ。
日本にもベンチャー企業が持っている技術で、100倍高速で動作する液晶パネルの技術がある。でも、ベンチャー企業のやることに、日本の企業はカネを出すような冒険は一切しない。だから、その企業はいま中国の大企業からカネをもらうしかなく、その企業はやがて表向き日本の企業、というのに中身は中国企業になる。
「4倍高速」程度のものをうたっている、いま売られているSONYの液晶テレビもパネルのほとんどは三星のもの、というのはよく知られている。
青色LEDだって、世界の生産量を見ればシェアは台湾企業や台湾の資金提供を受けた中国企業にシフトしており、日本企業のシェアは少ない、というのが現実 だ。おそらく、大西さんに限らず「日本が発明した青色LEDは日本が多くのシェアを握っている」と思っている人も多いのではないか?
シェアだけではなくて技術でも、日本もすでにトップだとは言いにくい。
最近の知財は「特許」として出さないものが非常に多い。つまり、特許とは「公開」されてしまうものだからだ。だから、現状はよくわからない、といってもいい。
もともと、特許は「公開するかわりに、権利を守ります」というものであって、権利を守ることが目的ではない。
特許法の第一条には「産業の振興」が目的であるので「公開する」ということが明確に書かれている。権利の保護はあくまでその「手段」にしか過ぎない。どうしても社外に出したくない「知財」は、結局のところ特許はとらない、ということを始めている企業も多い。とくに液晶パネルメーカーはその傾向が強い。
私たちは日本の新聞やマスコミを見ている。もちろん、そこには日本の情報がたくさん載っているのは当たり前だ。しかし、諸外国の情報はやはり少ない。日本の新聞を見ていると、世界は日本しかないように見えてしまう。決して悪いことでも意識してそうしているわけでもないのだが、マスコミとはそういう性質を持ったものなのだ。
しかしながら、その結果として、多くの日本人が「かつて豊かで世界一と言われた日本」の残像を引きずっているために、この大西氏のような「間違い」を犯す。日本の技術は高い!というのは、既にある一部の分野に限ったことであって、すべての分野で、ということではない。
むしろ日本はバイオはじめ、次世代の技術にカネとアタマを使ってこなかった結果として、その技術が衰退しつつある、ということをしっかり覚えておくほうがよい。そして、その現実を見据えたうえ、これからどうするかを考えないと、多くの見通しを誤ることになる。
人間はいつでも自分にとって気持ちいいことを聞きたいものであり、本当のことは聞きたくないものだ。しかし、知性とは、そういう「本当のことを知り、そこから立ち向かう」ものでなければならない。そうでなければ、現実は変えられない。
いま、弁理士の方にお話を伺うと、2009年の日本の特許出願件数は前年の二割割れではないか、と言っている。大衆向けのキモチイイ情報は既にその基礎が崩れている。正しい情報と正しい認識から出発する必要がある。