クラウド・コンピューティング、SaaSはこの世界的不況をテコに、これからさらに発展する可能性がある、とぼくは思う。いや、主流になるだろう。
というのは、クラウドになる、ということはアプリケーションを使う企業が、ネットを通じてその仕事のほとんどを自社の外に出す=アウトソーシングを、これまで以上に低い価格で行うことができる、ということになるからだ。
クラウド・コンピューティングであれば、アプリケーションソフトウエアのアップデートなどの作業はPCでは一切必要なくなる。サーバのメンテナンスもネットワークの向こう側でおこなう。データもネットワークの向こう側に置かれる。全面的にクラウドを導入した会社は、社内にはネットワークの敷設と設定、そして、ときどき必要なメンテナンスだけになる。OSのバージョンブラウザの種類も今までほどの意味もなくなる。
おそらく、この先ゲームも、グラフィックスも、データベースも、表計算も、ワープロも、FAの機器制御も、飛行機の航行システムでさえ、多かれ少なかれ、そのほとんどすべての処理が手元のコンピュータでは行われなくなり、ソフトウエアもサービス=オンラインで動くソフトウエアとして提供されるわけだ。そうなると、たとえば、ORACLEなどのデータベース企業は、データベースソフトウエアというソフトウエアそのものを出荷する企業になるのではなく、データベースのアウトソーシングを請け負う企業にならざるを得ない。マイクロソフトも当然のことながら、ソフトウエアをサービスとして提供する企業になるのであり、「メーカー」ではなくなることを余儀なくされる。やがてオフラインのアプリケーションでさえ、オンラインを仮想化する、ということでやっと動く、というものになるだろう。
この意味では、一時期騒がれていて、今も一部では騒がれている「シン・クライアント」などは、クラウドに至る過渡期の一技術であったに過ぎない、ということになる。
現在この時点で、あらゆるソフトウエア産業が、クラウドにならざるを得ない、という方向を見据えて、そこに照準を絞るべきだろう。
やがて、クラウドに最適なPC端末と、クラウドに最適なネットワーク機器なども登場するだろうし、その方向を見据えれば、ハードウエアの産業はまず間違いない、とぼくは思う。簡単に言えば、ソフトウエア産業は「クラウド・コンピューティング」に集中され統合される。ハードウエアはその動きに対応した製品を作れば売れる、ということだ。
クラウドコンピューティングはなぜ騒がれるか。それが従来かかっていたITのコストを、ネットワークによる世界的規模での集中管理に移行させることによって、アウトソーシングし、劇的に下げるからだ。たとえば、ハードディスクがこわれたので、修復、などということは、もう必要がない。それはデータセンターの仕事であり、あなたの仕事ではなくなる。
クラウド・コンピューティングは、簡単に言えば業界全体のパラダイムの転換そのものだ。そして、誰もがこの流れには逆らえない。そして、大不況が目の前にある今日、その流れは加速せざるを得ない。なぜならば、クラウドにすると、専門企業へのアウトソーシングが国境を越えて行われるため、世界でもっとも安くて良いクラウド・コンピュ-ティング・サービスしか生き残ることはできなくなるからだ。
ITはようやっと、ここに至って「完全なインフラ産業」になる。
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